500年前にETHER社によって空に打ち上げられた黒宮。
理想郷を謳い人種や文化圏の違いなどを無視して、人類という大きな集団から選別された人々を招き入れたノアの箱舟。
実際地上では戦争被害により人類の生存が極限まで不可能となり、おそらくこの世界最後の人類が住まうコロニーとなった。
EPE(Ether Particle Energy)によって半永久的に空を飛び続けるこの黒宮内では、500年たった今でもまったくもって衰えないどころかまだ未来の技術のようにも思えるETHER社の技術が多く普及している。
空間を照らす灯りも、機械を動かす燃料も、食物を作り上げる際にもこのEPEは欠かせないものとなっている。
導線を引かれた建築物ではコンセントにプラグをさすだけのような手軽さでEPEは供給される。
最初こそ住民が平等であった内部なのだが、現在は貧富や権力によって階層を大きく三つに分けた格差社会が形成されている。
●上層
一番小さなエリアだが、一番裕福で立派な都市。
住民は身分の良い暮らしをしており中層や下層の人間には貴族街と呼ばれている。
多くの企業本社や、議会の席を担う組織の集まる現グリフォニクスの心臓である。
中層、下層間は企業用エレベーターなどが点在する中、裏ルートを除いて上層へは中層からの中央エレベーターでしか上がることができないとされている。
●中層
一番広大なエリアであり人口も多い。
中心が中層企業や大規模な商店、交通機関も集まる都市部となっており、外側に向けて住宅街、工場群、産業地区となっている。
住宅街では多くの集合住宅のほか、一軒家などもあるが、中には地上ではなく空中に浮遊する小島に建てられたものなどもある。それらを空飛ぶ車などが行き来する様はまさに未来的な空間と言えるだろう。
工場群ではEPEが不要な物質や有害物質を出しにくい性質から見た目以上には清潔な空間となっている。各企業の工場から下層へとのびるエレベーターが存在している。これら工場群のほとんどが商工会の傘下に置かれている。
産業地区では農業や林業、水産業などをEP技術によって小規模かつ効率的に行う主要な生産ラインの他、引退した大手企業職員や軍人などが余生を過ごしながら自らの手で野菜や動物を育てる空間ともなっていることから、遥か昔の歴史に残る田舎的な風景が広がっている。
●下層
いわゆるスラム街でありゴミのたまり場。大きさは上層より少し大きい程度。
多くの地帯をMAD tea-partyという組織が縄張りにしており、薬物が蔓延し人がそこら中に転がっている景色が普通。
下層の住民を人件費の安い働き手として工場で雇う企業もあるため、中層からのエレベーターや、中層企業の工場が点在していたりする。それらと中心部の都市はまだましな方。東方面の廃材置き場や南方面の迷宮のように入り乱れる住宅街の治安は最悪。
エレベーターは住んでいる階層を参照し利用権限が大きく変わる。基本的に上層はどの階層にも自由に迎えるのだが、中層は職務などの必要性を持たない限り上層に向かうのは難しく、プライベートの利用の場合は大金をはたいて資格を買うか、優秀であることを証明して資格を得るかしないといけない。下層の場合は奇跡的に上・中層の民に拾われるかでもしない限り上の階を歩くことすら夢のまた夢だろう。一番多い事例は、下層の孤児が上・中層の家庭に養子として迎えられることであるが、それも比較的多いだけであって、当たり前のことではない。
エーテル粒子(EP)を発見し、500年前の世界に多くの技術革新をもたらした企業。
表向きには他企業へ技術を売り出すことで、空飛ぶ車の実現や、常に季節を感じさせない空間の提供、本来不可能であった食物の品種改良などを行った。
ただ多くの者が知るETHER社は闇の商人としてのものなのだろう。500年前、グリフォニクスの浮上と共に世界が終わるその瞬間、地上からのETHER社より告げられた彼らの本当の商売は兵器開発、それを国家、国際機関、そしてテロ組織と取引することであった。EPを使用した多くの兵器を開発し第三次世界大戦を巻き起こした張本人らは、種明かしと共に騒乱の火に呑まれ、崩壊したとされている。
ether particle、通称EPとして知られるこの粒子は万能物質と言えるだろう。
いまだに未知の性質が多くそのすべてが解明されていないこの粒子は、まるで魔法のような現象を実現可能とするものであった。
EPはある種の信号に対して特殊な反応を示し変化する。
具体的な例をいくつかあげると
1.他物質への変化
EPが鋼、水、繊維などに変化する反応。EPが他物質を無条件に変化させることは不可能とされている。また、一部存在しない物質に変化する信号も発見されており、我々の現実では不可能なことの多くを可能にしている要素の1つでもある。
2.固有エネルギーの発生
EPEの発生。既に有るエネルギーに変換することも可能で、何よりもほかのエネルギーと違うのはEPに対する命令に反応し指向性を持たせたりすることが可能なこと。例えばケーブルなどを必要とせずエネルギーの移動が可能である。
またEPEに干渉できるのはEPEであるため、その他のものは不干渉ですり抜けると考えられる。ただの盾でEP弾が防げないのはその為。1の例のようにEPを変化させたEP産のレッテルがはられている物質や同じEPEによるバリアなどを使用しよう。
これの他にも信号しだいでは多くの現象を起こすこと可能性を秘めているが、結局その仕組みは不明。信号もその発生方法は幾つかあるのだが実際どのように送っているのかも不明。偶然から発見させたものが多いため研究の進捗も不安定。
都市伝説とされていた、魔法のようなことが科学で行われているこの黒宮の中でも、まるで魔法だとしか言えないような現象を起こせるという少女。
その存在が数カ月前からすべての階層で再度噂されている。
実際その少女を確認した人間も多く存在しており、これも噂話によれば議会の議席にある人物らもその少女を狙っている可能性があるだとか。